ごあいさつ

理事長

 皆様には、平素よりきのくに信用金庫をお引き立ていただき、厚くお礼申し上げます。ここに第60期の事業概況についてご報告申し上げます。

 令和5年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症5類移行により経済活動が本格的に再開しました。大手企業を中心に賃上げ・ベースアップが行われ、社会全体に賃上げの動きが急拡大し、企業経営を取り巻く状況は大きく動き始めました。年が明けて2月には日経平均株価が史上最高値を34年振りに更新し、また、3月には日銀によるマイナス金利解除により金利のある世界へ踏み出したことで、景気が良くなることへの期待が高まっています。一方で、米中対立やロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢などの地政学的リスクなどにより、将来予測は困難な状況が依然として続くものと想定されます。

 このような状況の中、地域経済に目を向けると、円安の影響により訪日外国人観光客が増え、さらに、近隣からの観光客が活発になってきたことも背景となり、観光客数はコロナ禍前の水準まで回復しています。和歌山県においては、2024年は「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産登録20周年の節目であり、2025年の関西万博、今後の日本初民間ロケット打ち上げなどが新時代の観光を築き、県内景気の回復や新たな産業の創出が一層期待されます。一方で、経済活動の活発化と同時に「労働力不足」の問題が顕著に表れており、今後も人口減少の進行とともに一層深刻さを増すものと思われます。

 このような情勢の中、当期は、中期経営計画「きのくにValue Up 2022」の中間年度として、「変革に挑み、ともに成長」を柱に、様々な施策に取り組んでまいりました。また、当金庫発足30周年という節目の年であり、地域やお客さまへの感謝、新たな価値・未来の創出等をテーマとして掲げ、資金繰りへのサポートに留まらず、当金庫のネットワークを最大限に活かした販路拡大やビジネスマッチングなど、お客さま一人ひとりの課題解決に向けたサポートに注力してまいりました。

 その結果、預金は期末残高で1兆1,594億円、貸出金は期末残高4,015億円となりました。収益面につきましては、本来業務の収益を示す業務純益は14億79百万円となり、当期純利益でも12億14百万円を計上することができました。自己資本比率は15.94%と引き続き高い健全性を維持することができました。

 大企業を中心として業績を順調に伸ばしている企業が増えてきた反面、当金庫のお取引先さまの中心である中小零細企業の中には、価格転嫁が難しい、賃上げ余力が乏しく慢性的な労働力不足の状況にコロナ融資の返済が重なるなど、厳しい経営環境が続いている事業先も多いのが現状です。当金庫としては依然として厳しい状況にある事業先も含め、地域に密着した金融サービスの提供、お客さまのサポートに努めてまいります。持続可能な地域づくりや地域の発展に寄与するように、お客さまの『夢をかなえるお手伝い』に真摯に取り組んでまいります。これからも皆様のご期待にお応えできますよう役職員一同努力を重ねてまいりますので、尚一層のご支援とご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

令和6年6月
理事長 田谷 節朗